一般社団法人のデメリットとは?設立前に知るべき注意点とメリット

一般社団法人を設立する際には、メリットとデメリットを十分に理解しておく必要があります。

一般社団法人のデメリットとしては、剰余金の分配ができないことや、非営利型でなければ税制上の優遇措置を受けられない点が挙げられます。また、株式会社と比較して資金調達の方法が限られることや、株式市場への上場ができないことも考慮すべき一般社団法人のデメリットです。

一方で、一般社団法人のメリットは、少人数から設立可能であること、設立費用を抑えられること、行政の許認可が不要で比較的簡単に設立できること、事業目的に制限がなく活動の自由度が高いこと、そして「非営利徹底型」の要件を満たせば法人税が優遇される点が挙げられます。これらのメリットとデメリットを比較検討し、ご自身の目的に合った法人を選択することが重要です。

本記事では、一般社団法人のメリットとデメリット、設立前に知るべき注意点について解説していきます。

一般社団法人の設立で後悔しないための7つのデメリット

一般社団法人の設立後に後悔しないためには、いくつかの留意点を理解しておくことが重要です。ここでは、特に注意すべきデメリットについて簡潔にご説明いたします。設立後に「こんなはずではなかった」と後悔することのないよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。

1. 剰余金を役員や社員に分配することはできない

一般社団法人は、剰余金が生じても社員や理事への分配はできません。これは、一般社団法人が非営利団体であることを前提としたルールです。ただし、役員報酬や給与として支払うことは可能であり、その際は法人の定款や社員総会での決議に基づき適切に支給する必要があります。剰余金の分配が禁止されている点において、株式会社とは大きく異なるため、設立前にこの点を理解しておくことが重要です。

2. 非営利型でなければ税金の優遇措置が受けられない

一般社団法人の設立を検討する際、税制上の優遇措置を受けられるかどうかは重要なポイントです。すべての一般社団法人が税制上の優遇を受けられるわけではなく、非営利型一般社団法人として認められるためには、特定の要件を満たす必要があります。

非営利型に該当しない営利型一般社団法人の場合、株式会社と同様に普通法人として課税されるため、優遇措置は適用されません。税制上のメリットを享受したい場合は、非営利型の要件を事前に確認し、慎重に設立準備を進めることが大切です。

3. 株式会社などに比べて資金調達の方法が限られる

一般社団法人は、株式会社と比較して資金調達の選択肢が限定的であるという側面があります。株式会社であれば、株式の発行による増資や社債の発行など、多様な方法で資金を調達できますが、一般社団法人にはこれらの方法が基本的にありません。そのため、事業拡大や新たなプロジェクトの立ち上げに際して、金融機関からの融資や補助金・助成金といった手段が主な資金源となります。この資金調達の制約は、特に大規模な事業を展開する際に課題となる可能性があります。

4. 株式市場への上場は不可能

一般社団法人は、株式会社とは異なり株式の発行が行われないため、株式市場への上場はできません。これは、一般社団法人が剰余金の分配を目的としない非営利法人であるという性質に基づくものです。株式会社が、資金調達や企業価値向上の手段として上場を目指すのに対し、一般社団法人はそうした選択肢を持たない点に注意が必要です。そのため、設立後の事業拡大を検討する際には、この制約を踏まえた上で、他の資金調達方法を考慮する必要があります。

5. NPO法人と比較して社会的信用を得にくい場合がある

一般社団法人は、NPO法人と比較すると設立のハードルが低い一方で、NPO法人に求められるような事業報告書の公開義務や活動の公益性に対する第三者からの評価が少ないため、社会的な信用を得にくい場合があります。特に、寄付による資金調達を考えている場合、一般社団法人の場合は寄付者からの信頼を得るために、より一層の透明性や活動実績のアピールが必要となることが多いです。そのため、設立する法人の目的や活動内容に応じて、どちらの法人格が適しているかを慎重に検討する必要があります。

6. 2年に一度、役員の変更登記手続きが必須

一般社団法人では、理事の任期が原則として2年と定められているため、2年に一度、役員の変更登記手続きが必須です。役員に変更がない場合でも、任期が満了すれば「重任」として登記申請を行う必要があります。この登記申請は、役員の任期が満了した日から2週間以内に行う義務があり、遅れると代表理事が100万円以下の過料に処される可能性があるので注意が必要です。書類作成や手続きには手間と費用がかかるため、計画的に進める必要があります。登録免許税として1万円が必要になるほか、司法書士に依頼する場合は別途費用が発生します。

7. 法人としての事務手続きや書類作成が必要になる

一般社団法人を設立すると、法人としてさまざまな事務手続きや書類作成が必要になります。例えば、設立時の登記手続きはもちろんのこと、事業年度ごとに会計帳簿の作成や決算書類の作成、税務申告書の提出が義務付けられています。これらの業務は、会社法や税法などの専門的な知識を要するため、経理担当者の配置や税理士への依頼が必要となる場合があります。また、行政機関への報告義務や許認可申請が必要な事業を行う場合は、さらに多くの書類作成や手続きが発生します。これらの事務作業は、法人運営において継続的に発生するコストと手間を伴うため、事前に計画しておくことが重要です。

デメリットだけじゃない!一般社団法人を設立する5つのメリット

一般社団法人にはデメリットだけでなく、魅力的なメリットも多く存在します。株式会社と比較して設立時の負担が少ない点や、事業活動の自由度が高い点などが、一般社団法人のメリットとして挙げられます。これらのメリットを理解することで、ご自身の目的に合った法人格の選択に役立つでしょう。ここでは、一般社団法人を設立する際の主な5つのメリットについて、詳しくご紹介します。

1. 社員2名という少人数から設立できる手軽さ

一般社団法人の設立は、社員2名から可能であるため、株式会社と比較して少人数で手軽に始められます。設立にあたって特別な行政の許認可を必要としない点も、設立手続きの負担を軽減する大きな要因です。これらの特徴から、同窓会や学会、趣味のサークル活動など、小規模な組織や団体が法人格を取得したい場合に特に適しています。また、設立時の初期費用も抑えられるため、比較的少ない資金で法人を立ち上げられることも魅力の一つです。

2. 株式会社より設立費用を抑えられる

一般社団法人は、株式会社と比較して設立費用を抑えることができる点が大きなメリットです。株式会社を設立する際には、最低1円の資本金と、定款認証手数料や登録免許税などで約20万円以上の費用が必要となります。一方で、一般社団法人では資本金の要件がなく、定款認証手数料と登録免許税を合わせても約11万円程度で設立が可能です。設立時の初期費用を抑えたい方にとって、一般社団法人は魅力的な選択肢といえるでしょう。

3. 行政の許認可が不要で比較的簡単に設立できる

一般社団法人は、株式会社の設立に必要な行政庁の許認可が不要であるため、比較的簡単に設立できます。法務局への登記のみで設立が完了し、設立に必要な期間も短縮できるため、迅速に事業を開始したい場合に大きなメリットとなります。設立手続きの簡素さは、発起人の負担を軽減し、より手軽に法人格を取得できる点を魅力に感じる方が多いです。これにより、NPO法人と比較しても設立のハードルが低く、様々な団体が法人化しやすいといえます。

4. 事業目的に制限がなく活動の自由度が高い

一般社団法人は、法律や公序良俗に反しない限り、事業目的に特別な制限がない点が大きなメリットです。NPO法人が活動分野を20種類の特定非営利活動分野に限定されるのに対し、一般社団法人では公益事業だけでなく、収益事業や共益的な事業など、幅広い活動が可能です。これにより、多様なニーズに対応した事業展開が実現できます。定款には行う事業内容を明確に記載する必要がありますが、設立後に事業を追加する可能性がある場合は、あらかじめ関連する事業目的も記載しておくことが望ましいです。

5. 「非営利徹底型」の要件を満たせば法人税が優遇される

「非営利徹底型」の要件を満たす一般社団法人は、法人税法上の「公益法人等」として扱われるため、収益事業から生じた所得にのみ課税され、それ以外の所得には課税されません。この税制上の優遇措置は、一般社団法人の大きなメリットの一つです。非営利型を名乗るためには、定款に剰余金の分配をしない旨や、解散時の残余財産を国や地方公共団体、または他の公益法人等に寄付する旨を定めるなどの要件を満たす必要があります。この非営利型要件を満たすことで、税負担を大幅に軽減できるため、事業の安定的な運営に繋がります。

どの法人格を選ぶ?一般社団法人と他の法人の違いを比較

一般社団法人以外にも、株式会社やNPO法人、合同会社など様々な法人格があり、それぞれ特徴が異なります。どの法人格を選択するかは、事業目的や資金調達の計画、運営体制によって大きく左右されます。ここでは、一般社団法人と一般財団法人、公益社団法人といった他の法人との違いを比較し、それぞれの法人格が持つメリット・デメリットを解説します。

株式会社との違い:利益分配と上場の可否

株式会社と一般社団法人では、事業で得た利益の分配方法や株式市場への上場の可否において大きな違いがあります。株式会社は、株主への配当という形で利益を分配できますが、一般社団法人は非営利性が前提のため、剰余金を役員や社員に分配することはできません。また、株式会社は資金調達や企業価値向上のために株式上場を目指せますが、一般社団法人は株式を発行しないため、上場は不可能です。これらの違いは、法人の設立目的や将来的な事業展開に大きく影響するため、十分に理解しておく必要があります。

NPO法人との違い:設立のハードルと事業の自由度

NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づき設立される法人であり、設立には所轄庁からの認証が必要です。これにより、設立のハードルは一般社団法人よりも高いと言えます。一方で、一般社団法人は法務局への登記のみで設立が完了するため、行政の許認可が不要であり、比較的簡単に設立できます。

また、事業の自由度にも違いがあります。NPO法人は活動分野が20種類の特定非営利活動に限定されますが、一般社団法人は法律や公序良俗に反しない限り、事業目的に特別な制限がなく、幅広い活動が可能です。 このため、公益性の高い社会貢献活動を主目的とする場合はNPO法人が適している場合もありますが、より多様な事業展開を考えている場合は一般社団法人が選択肢となるでしょう。

合同会社との違い:設立コストと社会的信用

一般社団法人と合同会社は、どちらも設立コストを抑えられる法人格ですが、社会的信用や運営面で違いがあります。合同会社は、設立費用が電子定款を利用する場合は約6万円からと比較的安く、役員全員が有限責任社員となるため、経営の自由度が高い特徴があります。紙の定款の場合は約10万円から11万円程度です。

一方、一般社団法人は資本金が不要で、定款認証手数料と登録免許税を合わせると最低約11万円から12万円程度で設立可能です。ただし、合同会社は知名度が低く、株式会社に比べて社会的信用を得にくい傾向があります。一般社団法人もNPO法人に比べると社会的信用を得にくい場合がありますが、設立目的や事業内容によっては、より適切な選択となるでしょう。

一般社団法人の設立が向いているケースとは?

一般社団法人の設立は、特定の人に向いているといえます。例えば、同窓会や学会のように少人数の団体を法人化したい方や、資格認定や検定などの事業を行いたい方に適しています。営利を主な目的とせず、公益性の高い社会貢献活動を行いたい人も向いている人です。また、設立費用を抑えつつ、比較的簡単に法人格を取得したい方にも適しています。活動内容の自由度が高い点も特徴なので、幅広い事業を展開したい方にも魅力的な選択肢となるでしょう。

同窓会や学会などの任意団体を法人化したい場合

同窓会や学会、地域のコミュニティ活動といった任意団体を法人化したい場合に、一般社団法人は有効な選択肢となります。法人格を取得することで、団体としての社会的な信用度が高まり、契約行為や財産の管理が円滑になります。また、個人ではなく団体として銀行口座を開設できるため、会費や寄付金の管理もより透明性を持って行えるようになります。これらのメリットは、任意団体が活動を継続・発展させていく上で、大きな助けとなるでしょう。

資格認定や検定などの事業を行いたい場合

資格認定や検定などの事業を行う場合、一般社団法人の設立が適しています。一般社団法人は事業内容に制限がないため、特定の専門分野における資格の認定や試験の実施、スキルアップのための講座開講など、幅広い活動が可能です。これにより、社会的な信頼性を高めながら、公平かつ適正な運営を通じて事業を展開できます。また、法人格を取得することで、資格のブランド力を向上させ、広く普及させることにも繋がります。

営利を主な目的としない社会貢献活動をしたい場合

営利を主な目的とせず、社会貢献活動をしたい場合にも一般社団法人は適しています。株式会社のような利益の分配を目的としないため、公益性の高い事業を継続的に行う上で適した法人格です。例えば、地域の活性化、環境保全、文化振興など、多岐にわたる分野で社会的な課題解決を目指す活動に適しています。また、非営利徹底型の要件を満たすことで、税制上の優遇措置を受けられる可能性もあり、活動資金の確保においても有利になる場合があります。このため、社会貢献を強く意識した活動を展開したい方にとって、一般社団法人は有効な選択肢となります。

設立前に確認!一般社団法人のデメリットに関する注意点

一般社団法人の設立を検討する際は、メリットだけでなくデメリットにも十分注意し、設立後に後悔しないための事前確認が非常に重要です。特に、設立後の運営コストや役員・社員の役割と責任の明確化、非営利型を目指す場合の税務上の要件など、確認すべき点がいくつかあります。これらの注意点を事前に把握し、適切な対策を講じることで、スムーズな法人運営が可能になります。

設立後の運営コストをシミュレーションしておく

一般社団法人を設立する際には、登記費用や税理士への報酬といった初期費用だけでなく、設立後の運営にかかるランニングコストも考慮し、事前にシミュレーションしておくことが重要です。具体的な運営コストとしては、役員報酬や従業員の給与、事務所の賃料、消耗品費、通信費、広告宣伝費などが挙げられます。これらの費用を正確に把握し、事業計画に組み込むことで、設立後の資金繰りで行き詰まるリスクを軽減できます。特に、非営利事業を展開する場合には、収益源が限られる可能性もあるため、初期段階での綿密な資金計画が不可欠です。

役員や社員の役割と責任を明確にする

一般社団法人を円滑に運営するためには、役員と社員それぞれの役割と責任を明確に定めることが重要です。特に、理事と監事の役割分担、社員総会での意思決定プロセスなどを定款に明記することで、組織内の混乱を防ぎ、意思決定をスムーズに進めることができます。社員の権利や義務、責任の範囲も明確にすることで、法人運営におけるトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。設立前に、これらの点を具体的に検討し、定款に反映させることが、安定した法人運営の基盤となります。

非営利型を目指すなら税務上の要件を確認する

一般社団法人の設立において税制上の優遇を受けたい場合、非営利型一般社団法人として認められるための税務上の要件を事前に確認することが非常に重要です。非営利型には「非営利徹底型」と「共益的活動を目的とする法人」の2種類があり、それぞれ満たすべき要件が異なります。例えば、非営利徹底型では、定款に剰余金の分配を行わない旨や、解散時の残余財産を国や地方公共団体、公益法人等に帰属させる旨を記載する必要があります。これらの要件を満たさない場合、法人税法上は普通法人として扱われ、税制上の優遇措置を受けることができません。設立を検討する際は、専門家である税理士に相談し、自社の事業内容に合った非営利型の要件を把握しておくことが賢明です。

まとめ

ここまでご紹介したように、一般社団法人にはデメリットとメリットの両面があります。設立を検討する際は、これらの特徴を総合的に理解し、自身の目的や事業内容に合った法人格を選ぶことが重要です。特に、将来的な資金調達や事業展開、就職や転職における法人の位置付けなどを考慮し、後悔のない選択をすることが大切です。

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