一般社団法人の定款変更について詳しく解説

そもそも一般社団法人の定款とは?法人の基本ルールを定めた書類

一般社団法人を設立する際に作成する定款は、法人の名称や事業目的、主たる事務所の所在地など、法人の基本的なルールを定めた非常に重要な書類です。定款は「法人の憲法」ともいえる役割を担っており、法人の運営方針や活動の枠組みを明確にする指針となります。

この定款は、作成後に公証役場で公証人の認証を受けなければ効力が発生しません。 認証とは、定款が正当な手続きで作成されたことを公証人が証明するもので、一般社団法人は認証された定款がなければ設立登記を申請することができません。 公証役場での認証手続きには、設立時社員の印鑑証明書や定款の提出が必要です。

一般社団法人の定款変更が必要になる具体的なケース

一般社団法人の定款は、法人の基本的なルールを定めた重要な書類であるため、変更が必要となるケースがあります。例えば、事業の目的を変更する場合や、法人の名称、主たる事務所の所在地を変更する場合には、定款変更の手続きが必要です。特に、事業目的の変更は登記事項となるため、定款変更後に法務局への登記申請も行わなければなりません。

また、役員の任期に関する規定を変更する場合や、普通型一般社団法人から非営利型一般社団法人へ移行する際にも、定款変更が必要です。非営利型へ移行するには、剰余金の分配を行わないことや、解散時の残余財産を国や公益団体へ贈与することを定款に定める必要があります。

その他、公告方法の変更や、理事・監事・会計監査人といった社員総会以外の機関の設置または廃止なども定款変更が必要なケースに該当します。

一般社団法人の定款を変更する手続きの基本的な流れ

STEP1:社員総会を招集し特別決議で承認を得る

一般社団法人の定款を変更するには、原則として社員総会における特別決議が必要です。理事会での決議によって定款を変更することは認められていません。特別決議では、総社員の半数以上が出席し、かつ総社員の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。ただし、定款でこれより重い要件を定めている場合は、その定めに従います。定款変更の効力は、社員総会の決議があった時点で発生するとされています。

STEP2:社員総会議事録を作成して保管する

社員総会での特別決議により定款変更が承認された後は、その内容を証明する議事録を作成し、適切に保管する必要があります。議事録は、いつ、どこで、どのような内容の決議が行われたかを明確に記録する重要な書類です。例えば、2024年4月1日に開催された臨時社員総会で、事業目的の追加に関する定款変更が承認された場合、その日時と場所、具体的な変更内容を議事録に詳細に記載します。後日、定款変更について確認が必要になった際に、この議事録が証拠となります。特に、登記事項の変更を伴う場合は、法務局への登記申請の際に議事録の提出を求められることがほとんどです。一般社団法人法では、議事録を10年間保存することが義務付けられています。そのため、紙媒体で保管する場合はファイリングを徹底し、電子データで保管する場合はバックアップを取るなど、紛失や破損を防ぐための体制を整えることが求められます。

STEP3:変更内容が登記事項なら法務局へ申請する

定款の変更内容が登記事項に該当する場合、法務局へ変更登記の申請を行う必要があります。登記申請は、変更の効力が発生した日から2週間以内に行う必要があり、この期間を過ぎてしまうと過料が科せられる可能性があるため、迅速な対応が求められます。例えば、法人の名称や主たる事務所の所在地、事業目的の変更などが登記事項に該当します。法務局への申請に際しては、変更登記申請書や社員総会議事録など、定められた必要書類を提出しなければなりません。これらの書類は不備がないように事前に確認し、準備しておくことが重要です。また、登記申請には登録免許税という費用が発生します。例えば、法人の名称や目的、本店所在地の変更であれば、1件につき3万円の登録免許税が必要となります。スムーズな登記手続きのためには、専門家である司法書士に相談することも一つの方法です。

定款変更の要件!社員総会の「特別決議」とは?

特別決議が成立するための具体的な条件

一般社団法人の定款変更には、社員総会における特別決議が必要です。この特別決議を成立させるためには、総社員の半数以上が総会に出席することが第一の条件です。たとえば、社員が10名いる法人であれば、最低5名が出席しなければ決議の前提が整いません。次に、出席した社員の議決権のうち、3分の2以上の賛成を得る必要があります。これは、単なる過半数の賛成ではなく、より多くの賛成票が必要となることを意味します。たとえば、出席した社員の議決権が合計で300票ある場合、200票以上の賛成がなければ特別決議は成立しません。ただし、法人の定款で、これよりも厳格な要件、例えば「総社員の4分の3以上の賛成」などが定められている場合は、その定款の定めに従うことが必須となります。これは、定款が法人の最高法規としての性質を持つためです。これらの条件を全て満たして初めて、定款変更の特別決議が正式に成立し、その変更が有効となります。

定款変更時の社員総会議事録に記載すべき項目

定款変更時の社員総会議事録には、総会の開催日時や場所、出席した社員の氏名と議決権数、議長の氏名など、総会の基本情報を正確に記載する必要があります。また、議案として「定款変更の件」を明記し、変更後の定款の内容を具体的に記載することも重要です。どのような条文をどのように変更するのか、その変更案を明確に示す必要があります。記載例として、変更後の条文を全文掲載するか、変更箇所を具体的に示し、新旧対照表を添付するなどの方法があります。これらの記載事項は、将来的に定款変更の経緯を証明する重要な証拠となりますので、正確かつ詳細に記載することが求められます。

定款変更後に登記申請が必要となる登記事項の例

法人の名称や主たる事務所の所在地を変更した場合

法人の名称や主たる事務所の所在地を変更する際には、定款の変更だけでなく、法務局への登記事項の変更申請が必須となります。例えば、東京都千代田区に主たる事務所を置いていた一般社団法人が、事業拡大に伴い大阪府大阪市に主たる事務所を移転する場合、定款に記載されている主たる事務所の所在地を変更し、その後、法務局でその旨の登記を申請しなければなりません。この変更登記申請は、社員総会の特別決議で定款変更が承認された日から2週間以内に行う必要があり、期間を過ぎると過料が科せられる可能性があります。申請書類としては、変更登記申請書の他に、社員総会議事録や、変更後の定款を添付することが一般的です。特に、主たる事務所の移転のように管轄の法務局が変わる場合は、旧所在地と新所在地の両方の法務局に登記申請を行う必要がある点に注意が必要です。このように、法人の名称や主たる事務所の所在地といった重要な情報を変更する際には、定款の変更と登記事項の変更申請という二段階の手続きを正確に進めることが求められます。

事業目的を追加・変更した場合

事業目的の追加や変更を行う場合、定款の変更だけでなく、法務局への変更登記申請も必要になります。一般社団法人の事業目的は、法人の活動範囲を定義する重要な要素であり、どのような事業を行うのかを対外的に示す役割を担っています。例えば、これまで教育事業のみを行っていた一般社団法人が、新たに地域活性化事業にも取り組むことになった場合、定款にその旨を明記し、法務局で目的変更の登記を行う必要があります。これは、法人が定款に記載された目的の範囲を超えて事業を行うことができないとされているためです。もし、定款に記載されていない目的で事業を行った場合、その行為が無効と判断される可能性もあります。

事業目的は登記事項であるため、社員総会の特別決議で定款変更が承認された日から2週間以内に、管轄の法務局に申請を行わなければなりません。この際、変更登記申請書に加え、社員総会議事録や変更後の定款など、必要な添付書類を漏れなく提出することが求められます。法務局での登記が完了することで、正式に事業目的の変更が反映され、新たな事業活動が可能となります。事業目的の変更は、法人の方向性や戦略に大きな影響を与えるため、慎重な検討と正確な手続きが不可欠です。

役員の任期に関する規定を変更した場合

一般社団法人の役員の任期に関する規定を変更した場合も、定款変更の手続きが必要です。定款には、理事や監事といった役員の任期が具体的に定められており、例えば「理事の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする」といった規定があります。この任期を、例えば「3年」に変更したい場合や、役員の再任に関する規定を変更したい場合などが該当します。

役員の任期は、法人の運営体制に直接関わる重要な事項であるため、安易な変更は避け、慎重に検討する必要があります。変更の際には、まず社員総会を招集し、特別決議によって定款変更の承認を得る必要があります。その後、変更された定款に基づき、役員変更登記が必要となる場合があります。

例えば、任期満了に伴い役員が交代する場合や、任期中に役員が辞任し新たに選任された場合などには、役員変更登記が必要です。役員変更登記は、変更の効力が発生した日から2週間以内に行わなければなりません。これを怠ると、過料が科せられる可能性がありますので注意が必要です。

役員変更登記の手続きには、変更登記申請書や社員総会議事録、就任承諾書などの書類が必要です。役員変更は法人の信頼性にも関わる重要な手続きであり、正確かつ迅速に対応することが求められます。専門家である司法書士に相談することで、スムーズな手続きが期待できます。

定款変更しても登記申請が不要なケース

事業年度の末日を変更する場合

事業年度の末日を変更する際には、定款変更の手続きは必要ですが、法務局への変更登記申請は不要です。これは、事業年度の末日が登記事項ではないためです。例えば、これまで3月31日を事業年度の末日としていた一般社団法人が、都合により12月31日に変更したい場合、社員総会で定款変更の特別決議を行い、定款を修正すれば手続きは完了します。変更後の定款には、新しい事業年度の末日を明記します。この変更は、法人の内部的な運営に関わるものであり、外部に対して公示する必要がないため、登記は求められません。しかし、税務署などへの届出は必要となる場合がありますので、関連する行政機関への確認は怠らないようにしましょう。具体的には、事業年度変更の事実を税務署に通知するための「異動届出書」などの提出が求められます。このように、定款変更が必要な事項であっても、それが登記事項であるか否かによって、その後の手続きが変わってくる点に注意が必要です。

社員の資格に関する規定を変更する場合

一般社団法人において、社員の資格に関する規定を変更する場合も定款変更が必要です。社員の資格に関する規定とは、法人の社員になるための条件や、社員が持つ権利・義務、または社員たる地位の喪失事由などを定めたものです。例えば、「正会員は、当法人の目的に賛同し、理事会が定める入会申込書を提出し、理事会の承認を得た個人とする」という規定を、「当法人の目的に賛同し、所定の会費を納入した法人」に変更したい場合などがこれに該当します。また、社員の加入方法、退会方法、または社員総会での議決権の行使方法など、社員の地位に直接関わる規定の変更も含まれます。

これらの規定を変更する際には、まず社員総会を招集し、特別決議によって変更案を承認する必要があります。特別決議の要件は、総社員の半数以上が出席し、かつ総社員の議決権の3分の2以上の賛成を得ることです。変更が承認されたら、その内容を反映した社員総会議事録を作成し、適切に保管します。社員の資格に関する規定は登記事項ではないため、法務局への変更登記申請は不要です。しかし、法人運営の根幹に関わる重要な変更ですので、変更後の定款の内容が法的に適切であるか、また社員に十分に周知されているかを確認することが大切です。

なお、変更した社員の資格規定によって、社員の構成が大きく変わる場合や、社員数が変動するような場合は、その旨を所轄庁へ届け出る必要があることもありますので、事前に確認が必要です。

定款の変更登記申請で法務局に提出する必要書類一覧

一般社団法人の定款変更に伴う変更登記申請では、変更内容に応じて様々な必要書類を法務局に提出します。まず、共通して必要となるのが「変更登記申請書」です。これは法務局のウェブサイトからダウンロードできるほか、司法書士に依頼すれば作成してもらえます。次に、定款変更の決議があったことを証明する「社員総会議事録」も必須の書類です。議事録には、総会の開催日時や場所、決議内容などが具体的に記載されている必要があります。登記事項に変更が生じた日から2週間以内に登記申請を行う必要があるため、社員総会議事録の作成は速やかに行いましょう。

変更内容によっては、さらに以下の書類が必要となります。例えば、目的や名称、主たる事務所の所在地を変更する場合は、原則として「定款」を添付します。ただし、社員総会議事録で変更内容が明確に分かる場合は、定款の添付が不要となるケースもあります。役員の変更を伴う場合には、「就任承諾書」や、新たに就任する代表理事の「印鑑証明書」、その他の役員については「住民票記載事項証明書」などの本人確認書類が求められることがあります。代表理事の印鑑証明書は、市区町村長が作成したもので、再任の場合を除き必要です。また、代理人が申請を行う場合は「委任状」が必要となります。これらの必要書類は、変更内容や法人の機関設計によって細かく異なるため、事前に管轄の法務局や専門家へ確認することをおすすめします。オンライン申請やQRコード付き書面申請を利用すれば、登記手続きをスムーズに進めることが可能です。

まとめ

一般社団法人の定款変更は、法人の運営において非常に重要な手続きです。本記事では、定款変更の必要性から具体的な手続き、注意点まで詳しく解説いたしました。定款変更が必要となるケースとして、事業目的の変更や法人の名称、主たる事務所の所在地変更などがあります。これらの変更は、社員総会の特別決議で承認を得た後、変更内容に応じて法務局への登記申請が必要となります。

特に、一般社団法人の定款変更における注意点としては、まず特別決議の要件を正確に満たすことが挙げられます。社員総会の招集通知を適切に行い、総社員の半数以上が出席し、かつ総社員の議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。また、変更内容が登記事項に該当する場合は、特別決議から2週間以内に法務局へ変更登記を申請しなければなりません。この期間を過ぎると過料が科せられる可能性があるため、迅速な対応が求められます。

さらに、社員総会議事録は、変更の証拠となる重要な書類ですので、正確に作成し、10年間保管する義務があります。記載すべき項目も多岐にわたるため、抜け漏れがないように注意しましょう。事業年度の末日や社員の資格に関する規定の変更のように、定款変更は必要でも登記申請が不要なケースもありますが、税務署などへの届出が必要な場合もありますので、関係各所への確認を怠らないことが重要です。

このように、一般社団法人の定款変更には、法的な要件や期限、そして提出書類など、多くの留意点が存在します。これらの手続きを適切に進めるためには、事前の情報収集と準備が不可欠です。もし手続きに不安がある場合は、司法書士などの専門家へ相談することを強くおすすめします。正確な手続きを行うことで、法人の健全な運営と発展に繋がるでしょう。

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