一般社団法人を自分で設立する方法と注意点をわかりやすく解説

一般社団法人を設立するには、司法書士などの専門家に依頼する方法が一般的ですが、手順を理解すれば自分で設立することも可能です。手続きの全体像や必要な書類を把握することで、一見複雑に思える設立作業も、実はそれほど難しくはありません。

本記事では、自分で設立する方法をステップごとに解説し、費用を抑えつつスムーズに手続きを進めるためのポイントを紹介します。これから一般社団法人の設立を考えている方は、この方法を参考に準備を進めてみてください。

一般社団法人の設立は自分でできる?専門家への依頼との違い

一般社団法人の設立手続きは、法律の専門知識がなくても自分で行うことが可能です。専門家に依頼した場合、定款作成や登記申請などの煩雑な手続きを代行してもらえるため、時間と手間を大幅に削減できる利点があります。

一方、自分で設立する場合は、これらの手続きを全て自身でこなす必要がありますが、専門家への報酬が不要になるため、設立費用を大きく抑えることができます。どちらを選択するかは、費用、時間、手続きの確実性の何を重視するかによって決まります。

不明点があれば専門家へ相談することも選択肢の一つです。

自分で一般社団法人を設立するメリット

自分で一般社団法人を設立する最大の利点は、専門家への報酬が不要なため、設立にかかる総費用を大幅に削減できる点です。また、定款作成から登記申請までの一連の手続きを自ら経験することで、法人の組織や運営に関する法的な知識が深まります。この経験は、設立後の法人運営においても直接役立つ実務的な知識となり、事業の基盤をより強固なものにします。

設立プロセス全体への理解が深まることも、創業者にとって大きなメリットといえます。

設立にかかる費用を大幅に抑えられる

一般社団法人の設立を司法書士や行政書士といった専門家に依頼すると、報酬として数万円から十数万円程度の費用がかかります。しかし、自分で手続きを完結させれば、この専門家報酬を全額節約することが可能です。もちろん、定款の認証手数料(約5万円)や法務局へ納める登録免許税(6万円)といった法定費用は、自分で設立する場合でも必ず発生します。それでも、専門家への報酬分がなくなるだけで、設立にかかるトータルコストは大幅に圧縮できます。

事業開始時の運転資金を少しでも多く確保したい創業者にとって、この費用削減は非常に大きな魅力となります。

自分で一般社団法人を設立するデメリット

自分で一般社団法人設立の際、費用を抑えられる一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。最も大きな点は、定款の作成や登記書類の準備といった慣れない作業に多くの時間と労力を要することです。本業の準備と並行して進める場合、スケジュール管理が重要になります。

また、法律の知識が不十分なまま書類を作成すると、不備を指摘され、手続きが滞るリスクも考慮しなければなりません。これらのデメリットを理解した上で、自分で行うかどうかを慎重に判断する必要があります。

時間と手間がかかり本業に支障が出る可能性がある

一般社団法人の設立には、事業目的の検討、定款作成、必要書類の収集、公証役場や法務局とのやり取りなど、一連の煩雑な作業が伴います。これらの手続き内容を一つひとつ調べ、正確に実行するにはかなりの時間と労力を要するため、設立準備に集中するあまり、本来注力すべき事業計画の策定やサービス開発といった本業の準備が遅れる可能性があります。

特に、事業の立ち上げと並行して設立手続きを行う場合、時間的な制約が大きな負担となりかねません。設立後の円滑な法人運営を見据え、手続きにかかる時間的コストを事前に見積もっておくことが求められます。

書類の不備で手続きが滞るリスクがある

設立登記の申請には、定款、設立時社員の決議書、役員の就任承諾書など、法律で定められた多数の必要書類を不備なく作成して提出しなければなりません。もし書類の記載内容に誤りがあったり、必要な押印が漏れていたり、添付書類が不足していたりすると、法務局で補正を求められます。

補正のためには再度法務局へ出向くか、郵送でのやり取りが必要となり、その分設立日が遅れてしまいます。特に、定款の事業目的の記載方法など、法的な判断が求められる部分で不備が生じやすいため、専門知識がないまま進めると、手続きが停滞するリスクが高まります。

【完全ガイド】自分で一般社団法人を設立するための8ステップ

一般社団法人を設立する際の具体的な手続きは、主に6つまたは7つのステップに分けられます。まず人の基本となる事項を決定することから始まり、定款の作成と認証、登記申請書類の準備、法務局への申請、そして設立後の各種届出まで、一連の手続きを順を追って進めます。

各ステップで求められる作業を正確に理解し、着実に実行することが、スムーズな法人設立の鍵となります。このガイドを参考に、一つひとつの手続きを確認しながら作業を進めていきましょう。

ステップ1:法人の基本事項(名称・事業目的・社員など)を決める

設立手続きの第一歩として、法人の骨格となる基本事項を決定します。まず、法人の顔となる「名称(商号)」を決めます。次に、法人がどのような活動を行うかを示す「事業目的」を具体的に定めます。この目的は、適法性、営利性、明確性を満たす必要があります。

法人の構成員である「社員」は2名以上確保し、業務を執行する「理事」を1名以上選任します。なお、理事会を設置する場合は理事が3名以上必要です。

その他、主たる事務所の所在地や事業年度といった、法人の運営に不可欠な項目もこの段階で明確化しておきます。

これらの基本事項は、後の定款作成の基礎情報となります。

ステップ2:法人の実印を作成する

法人の基本事項が固まったら、次に法人の実印(代表者印)を作成します。この印鑑は、設立登記申請の際に法務局へ登録し、以降は契約書などの重要な書類に法人を代表して押印するために使用するものです。

一般的には、円形の印鑑の外枠に法人名、内枠に「代表理事之印」といった役職名を彫刻します。サイズには規定があり、印影が一辺1cmの正方形より大きく、3cmの正方形の中に収まるものでなければなりません。

登記申請の流れにおいて、申請書への押印にこの法人実印が不可欠となるため、早めに準備しておくことが賢明です。同時に銀行印や角印も作成しておくと、設立後の業務を円滑に開始できます。

ステップ3:根本規則となる定款を作成する

定款は、法人の組織や運営に関する基本ルールを定めたものであり、設立手続きにおいて最も重要な書類です。ステップ1で決めた名称、事業目的、主たる事務所の所在地、設立時社員の氏名・住所といった「絶対的記載事項」を漏れなく盛り込んで作成します。これらの記載事項が一つでも欠けていると定款自体が無効となるため、細心の注意を払わなければなりません。

作成した定款の末尾には、設立時社員全員が署名、または記名押印をします。この後の流れとして、完成した定款は公証役場で認証を受ける必要があります。インターネット上でひな形を入手できますが、法人の実態に合わせて内容を修正することが不可欠です。

ステップ4:公証役場で定款の認証を受ける

株式会社や一般社団法人などを設立する際には、作成した定款が法的な効力を持つために、主たる事務所の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人の認証を受ける必要があります。

この認証手続きの際には、作成した定款3通(公証役場保管用、法人保管用、登記申請用)、設立時社員全員の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内)、実印に加えて、実質的支配者となるべき者の申告書も持参する必要があります。

認証手数料は会社の資本金の額によって異なり、資本金が100万円未満の場合は3万円、100万円以上300万円未満の場合は4万円、その他の場合は5万円となります。 これに加え、定款の謄本交付手数料(1枚につき250円)や、紙の定款の場合は収入印紙代4万円がかかります。

事前に公証役場へ連絡し、予約や必要書類について確認しておくことで、手続きの流れがスムーズになります。公証人が定款の内容を法的に審査し、問題がなければ認証が付与され、次の登記申請ステップに進むことができます。

ステップ5:設立時社員が基金(資本金)を払い込む

一般社団法人には株式会社のような資本金制度はありませんが、任意で法人の活動資金となる「基金」を設けることが可能です。基金制度を採用する場合は、定款にその旨を規定し、設立時社員が定めた期日までに、法人の銀行口座へ全額を払い込みます。

この払込みを証明するため、振込記録が記載された通帳のコピーと、払込証明書を作成し、登記申請時に提出します。一般財団法人とは異なり、一般社団法人では基金の設置やその金額について法的な義務はありませんが、法人の初期活動を支える重要な資金源となるため、事業計画に基づいて適切な額を設定します。

ステップ6:法務局へ提出する登記申請書類を準備する

設立登記を申請するためには、法務局へ提出する一連の必要書類を準備します。主な書類として、設立登記申請書、公証人の認証を受けた定款、設立時社員の決議書、設立時理事の就任承諾書、設立時代表理事を選定したことを証明する書面、そして理事全員の印鑑証明書が挙げられます。

基金を設けた場合は、その払込みがあったことを証明する書面も添付します。これらの必要書類は、法務局のウェブサイトで様式や記載例が公開されているため、それらを参考にしながら正確に作成します。すべての書類が揃ったら、内容に誤りや漏れがないか、入念に確認作業を行います。

ステップ7:管轄の法務局で設立登記を申請する

すべての登記申請書類が準備できたら、主たる事務所の所在地を管轄する法務局へ設立登記の申請を行います。申請方法は、窓口へ直接持参するか、郵送するかのいずれかです。法務局が申請書を受理した日が法人の設立日となるため、特定の日を設立日にしたい場合は、その日に窓口へ持参するのが確実です。

申請時には、登録免許税を納付します。登録免許税額は、会社形態や資本金額によって異なり、例えば株式会社の場合は最低15万円、合同会社の場合は最低6万円となります。申請後、1週間から10日程度の審査期間を経て、書類に不備がなければ登記が完了します。この登記完了をもって、法人が法的に成立したことになり、一連の設立手続きの流れも大きな区切りを迎えます。

ステップ8:設立後に必要な税務署などへの届出を行う

法務局での設立登記が完了した後も、手続きは続きます。まず、所轄の税務署へ「法人設立届出書」を提出します。収益事業を行う場合は、青色申告の承認申請書や給与支払事務所等の開設届出書なども必要に応じて提出します。これらの税務関連の届出は提出期限が定められているため、登記完了後、速やかに行動しなければなりません。

次に、都道府県税事務所および市区町村役場にも、それぞれ法人設立の届出を行います。従業員を雇用する際は、労働基準監督署や年金事務所での社会保険・労働保険の加入手続きも必須です。

これらの手続きを完了させることで、法人運営の基盤が整います。

自分で一般社団法人を設立する際に注意すべき3つのポイント

自分で一般社団法人を設立する手続きをスムーズに進め、後のトラブルを防ぐためには、特に注意すべき点が3つあります。法人の活動範囲を定める「事業目的」の記載方法、登記申請の成否を左右する「必要書類」の準備、そして設立後に義務付けられている税務署などへの「各種届出」です。

これらのポイントをあらかじめ正確に理解し、慎重に対処することで、手続きの失敗リスクを大幅に減らし、円滑な法人設立を実現できます。それぞれの詳細について、以下で確認していきましょう。

事業目的に違法性や不明確な点がないか確認する

定款に記載する事業目的は、法人の活動内容を具体的に示すものであり、適法性、営利性、明確性の要件を満たす必要があります。加えて、許認可が必要な事業を行う場合は、その許認可要件を満たす文言を盛り込むことが不可欠です。公序良俗に反する事業や、法律で禁止されている内容は目的として認められません。

また、「各種コンサルティング業務」といった抽象的な表現は避け、「中小企業向けの経営コンサルティング業務」のように、誰が読んでも事業内容を具体的にイメージできるよう明確に記述します。事業目的が不明確であると登記官に判断されると、補正を求められ手続きが遅延する原因となります。

登記申請で必要となる書類を正確に用意する

一般社団法人の設立登記を申請する際には、法律で定められた多くの必要書類を揃えなければなりません。設立登記申請書、認証済みの定款、役員の就任承諾書、印鑑証明書など、提出すべき書類は多岐にわたります。これらの書類のうち一つでも欠けていたり、記載内容に誤りがあったりすると、申請は受理されず、補正が必要になります。

特に、役員の氏名や住所、法人の名称などの表記は、印鑑証明書などの公的書類と一字一句違わぬように記載します。法務局のウェブサイトで最新の書式や記載例を確認し、チェックリストを作成するなどして、すべての必要書類が完璧な状態で揃っているか、提出前に何度も確認することが重要です。

設立後の税務や社会保険の手続きを忘れずに行う

法人設立登記の完了は、法人格を取得する第一歩です。事業を本格的に開始するには、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ「法人設立届出書」を提出する必要があります。

特に税務署への届出は設立後2ヶ月以内が目安とされており、青色申告の承認申請など税制上の優遇措置を受けるための手続きも、この時期に合わせて進めることが重要です。また、従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入手続きが求められます。

これらの設立後の手続きは、提出が遅れると税務署からの重要書類が届かなくなり、結果的に申告漏れのリスクが生じる可能性があります。また、青色申告の承認申請書などの提出期限を過ぎると、税制上の優遇措置を受けられなくなるなど、事業運営に不利益が生じる場合があるため、計画的かつ迅速な手続きを心がけることが大切です。

一般社団法人を自分で設立する場合にかかる費用の内訳

自分で一般社団法人を設立する場合、専門家への報酬は発生しませんが、法律で定められた実費(法定費用)は必ず支払う必要があります。主な内訳は、公証役場へ支払う定款認証手数料が約5万2,000円、法務局へ納付する登録免許税が6万円です。この2つで合計約11万2,000円が最低限必要な費用となります。

この他に、法人の代表者印の作成費用として数千円から数万円、役員の印鑑証明書や法人の登記事項証明書の取得手数料として数百円程度の実費が加わります。

これらの費用をあらかじめ把握し、資金計画を立てておくことが大切です。

まとめ

一般社団法人を設立するには、専門家の力を借りる方法だけでなく、自分で全ての手続きを行うという選択肢も存在します。自分で設立する最大のメリットは、専門家報酬が不要なため費用を大幅に抑えられる点です。しかし、定款作成や登記申請といった一連の作業には相応の時間と手間がかかり、書類に不備があれば設立が遅れるリスクも伴います。

手続きの主な流れは、基本事項の決定、定款作成認証、法務局への登記申請、設立後の諸官庁への届出です。この記事で解説したステップや注意点を踏まえ、計画的に準備を進めることで、自分での設立は十分に実現可能です。両者の利点と欠点を比較し、自身にとって最適な方法を選択してください。

 

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