評議員会とは、一般財団法人や学校法人などに設置される、法人の重要事項を決定する機関です。この記事では、評議員会(評議会・評議委員会とも呼ばれることがある)の基本的な定義から、それを構成する評議員との違い、具体的な役割や権限について解説します。
法人運営のガバナンスを理解する上で重要な評議員会の仕組みを、初心者にも分かりやすく説明します。
評議員会とは?法人の重要事項を決定する最高意思決定機関
評議員会とは、一般財団法人など特定の法人において法律で設置が義務付けられている機関です。法人の運営に関する基本方針や役員の選任・解任、定款の変更といった極めて重要な事項を決議する権限を持ち、法人の最高意思決定機関として位置づけられています。
理事会が業務執行の決定を行うのに対し、評議員会は理事会を監督する立場にあり、法人の健全な運営を確保するためのガバナンスの要となります。
評議員会が設置される主な目的と存在理由
評議員会が設置される主な目的は、法人の運営が設立者の意思や社会的な要請に沿って適正に行われるよう、業務執行を行う理事会を監督することにあります。理事や理事会が独断で法人の財産を私的に利用したり、設立の趣旨から逸脱した運営を行ったりすることを防ぐための牽制機能として存在します。
これにより、法人の透明性や公平性が保たれ、特に財産の維持が重要な財団法人などにおいて、健全な組織統治(ガバナンス)を実現します。
「評議員」と「評議員会」は何が違う?それぞれの定義を解説
評議員と評議員会は密接に関連しますが、その定義は異なります。評議員とは、評議員会を構成する個々のメンバー(自然人)を指します。法人の運営に対して公正な判断を下すことが期待される立場の人物が選任されます。一方、評議員会とは、その評議員全員によって構成される合議体のことです。個々の評議員が意見を表明し、議論を重ねた上で、法人の重要事項について決議を行う機関そのものを指します。
評議員会に与えられている権限と決議できる事項
評議員会には、法律や法人の定款によって、法人運営の根幹に関わる重要事項についての決議権限が与えられています。この権限は、業務執行を担当する理事会を監督し、法人が設立趣旨に沿って適正に運営されることを保証するために不可欠です。代表的な権限としては、法人運営の担い手である役員(理事・監事)の選任および解任、法人の根本規則である定款の変更、そして事業年度ごとの事業計画や計算書類の承認などが挙げられます。
役員(理事・監事)の選任および解任
評議員会の最も重要な権限の一つが、法人の業務執行を担う理事と、その執行状況を監査する監事の選任および解任です。理事や監事がその職務を適切に遂行していない、あるいは法人に損害を与える可能性があると判断した場合、評議員会は解任の決議を行うことができます。この権限により、評議員会は理事会を実質的にコントロールし、役員による不適切な運営を防ぐ監督機能を発揮します。法人の健全なガバナンスを維持する上で、中心的な役割を担う権限といえます。
定款の変更に関する決議
法人の目的、組織、運営に関する根本規則を定めた「定款」の変更は、評議員会の専権事項です。定款は法人の憲法ともいえる重要なものであり、その変更は法人の根幹を揺るがす可能性があるため、業務執行機関である理事会だけの判断では変更できません。定款変更を行うには、原則として評議員会において議決権を持つ評議員の3分の2以上の賛成といった、通常より厳格な特別決議が求められます。これにより、法人の設立趣旨や基本理念が安易に変更されることを防ぎます。
事業計画書や計算書類などの承認
評議員会は、法人の事業運営と財務状況を監督するため、事業計画書や収支予算書、事業年度終了後の計算書類(貸借対照表や損益計算書など)を承認する権限を持ちます。理事会はこれらの書類を作成して評議員会に提出し、承認を得なければなりません。評議員会が事業内容や財産の状況を精査し、その妥当性を判断することで、法人の運営の透明性と財政の健全性が確保されます。これは、法人が計画に沿って適切に運営されているかを確認する重要なプロセスです。
その他、法律や定款で定められた事項
上記の権限に加えて、評議員会は法律(一般社団・財団法人法など)や各法人の定款によって定められた、その他の重要事項についても決議権を持ちます。具体的には、役員報酬の基準の決定、基本財産の処分や多額の借財の承認などが挙げられます。これらの事項は、法人の財政基盤や運営方針に大きな影響を与えるため、理事会の判断だけに委ねるのではなく、より客観的な立場にある評議員会の承認を経ることで、慎重な意思決定を促し、法人の持続的かつ健全な運営を担保する役割を果たします。
評議員会はどのようなメンバーで構成されるのか
評議員会は、法人の運営に対して公正な判断を下せる識見を持った評議員によって構成されます。評議員の人数は、一般財団法人では3名以上と法律で定められています。法人の独立性とガバナンスを確保するため、評議員は当該法人の理事、監事、または使用人(職員)を兼任することができません。また、特定の理事と利害関係にある人物が評議員の多数を占めることも制限されており、中立的かつ客観的な立場から理事会を監督できる体制が求められます。
評議員会はいつ・どのように開催される?招集手続きの流れ
評議員会には、毎事業年度の終了後、一定の時期に必ず開催される定時評議員会と、必要に応じて随時開催される臨時評議員会があります。招集は、原則として理事会の決議に基づき、理事が手続きを行います。招集する際は、評議員に対し、会の目的である事項、日時、場所などを記載した書面または電磁的方法で通知する必要があります。この通知は、法で定められた期日(通常は会日の一週間前)までに行わなければなりません。
これらの手続きは法令や定款に厳格に定められています。
【法人別】評議員会の設置義務と役割の違い
評議員会は、すべての法人に設置されているわけではなく、その設置義務や役割は法人の種類によって異なります。特に一般財団法人においては、法律で必ず設置しなければならない「必置機関」とされています。一方で、学校法人や社会福祉法人など他の法人格においても評議員会(または評議会)が設置されますが、その権限や位置づけには違いが見られます。ここでは代表的な法人を取り上げ、それぞれの評議員会の特徴を解説します。
一般財団法人における評議員会
一般財団法人では、評議員会は法律で設置が義務付けられた必置機関であり、法人の最高意思決定機関として機能します。財団法人は個人や法人が拠出した財産を基礎として設立されるため、その財産が設立者の意思に沿って適正に管理・運営されることが極めて重要です。そのため、評議員会が理事・監事の選解任権、定款変更の決議権、計算書類の承認権といった強力な権限を有し、業務執行を行う理事会を監督する仕組みになっています。これにより、財産の適切な維持と法人の健全な運営が担保されます。
公益社団法人・公益財団法人における評議員会
行政庁から公益認定を受けた公益社団法人や公益財団法人では、評議員会が担うガバナンスの役割は一層重要になります。これらの法人は税制上の優遇措置を受ける代わりに、事業の公益性が厳しく問われるためです。特に公益財団法人においては、一般財団法人と同様に評議員会が必置機関です。評議員会は、法人が行う公益目的事業が計画通り適正に実施されているかを監督し、国民からの信頼に応えるための組織統治の要となります。役員の選解任などを通じて、法人の公益性を維持する中心的な役割を担っています。
学校法人における評議員会
私立学校法に基づいて設立される学校法人にも、評議員会が設置されます。学校法人の評議員会は、一般財団法人とは異なり、理事会に対する諮問機関としての性格が強いのが特徴です。
予算や事業計画の決定、寄附行為(定款にあたるもの)の変更、重要な規則の制定・改廃といった事項について、理事会が意思決定を行う前に、あらかじめ評議員会の意見を聴かなければならないと定められています。これにより、教職員や卒業生など、多様な関係者の意見を学校運営に反映させ、より開かれた経営を実現する仕組みとなっています。
まとめ
評議員会は、一般財団法人や学校法人といった特定の法人において、その健全な運営を支えるための重要な機関です。法人の最高意思決定機関として、あるいは理事会への諮問機関として機能し、理事・監事の選任や解任、定款の変更、事業計画の承認といった法人運営の根幹に関わる事項を決定・審議します。
評議員会が理事会を監督し、牽制する役割を果たすことで、法人の透明性と公平性が保たれ、適正な組織統治(ガバナンス)が実現されます。







