一般社団法人設立によるクリニック開設手続きのメリット・デメリットについて解説します

一般社団法人によるクリニック開設に、医師や歯科医師のほか、医療業界に新規参入を考えている経営者の関心も高まってきています。個人開設のクリニックや医療法人のクリニックではなく、一般社団法人を設立してクリニックを開設するメリットは、法人格を持つことで家計と経営が分離でき、組織として経営が行える点、長期的な経営の安定性が期待できる点があります。また、法人設立のスピードが医療法人と比べて早く、設立にかかる費用を抑えられる場合があります。医療法人を設立するには都道府県の認可が必要ですが、一般社団法人の設立自体は都道府県の認可は必要ではなく、法人登記のみで設立ができるためです。その他のメリットとしては、代表者が医師と歯科医師に限定されていないため非医師が代表者となることができる点、医療法人では行うことのできる附帯事業が限定的ですが、一般社団法人ならそれ以外の附帯事業を行うことができる点、医療法人と異なり定期的な都道府県への届出や定款を変更するための認可が必要ない点が挙げられます。しかし、デメリットも存在します。一般社団法人でのクリニック開設の実績が少ないため、管轄の保健所によっては前例がなく、そのために審査が長引くことがあります。クリニックを開設する一般社団法人は、非営利性を徹底した一般社団法人であることを厳格に求められるためその確認に時間を要する場合、審査がさらに長引くこともあります。また、個人でのクリニック実績がなければ一般社団法人設立のクリニック開設を認めないケースもあります。また、非医師による安易な一般社団法人設立によるクリニック開設で事故や事件が多々起きてしまったため、保健所も許可をする際に今まで以上に厳しい審査を行っている傾向があります。保健所の開設許可を得られなければクリニックを開設できませんので、一般社団法人を設立したものの診療所を開設できなかったということもあります。メリットとデメリットを総合的に考慮し、一般社団法人設立によるクリニック開設が適しているかを検討することが大切です。

非営利型一般社団法人の設立とクリニック開設の流れ

非営利型の一般社団法人の設立の流れは、まず設立代表者(設立時社員)を決定します。最低2名以上が必要です。その設立時社員で定款を作成し、公証役場で公証人による定款の認証を受けます。その後、法務局に設立登記の申請を行います。クリニック開設の流れは、管轄の保健所に一般社団法人によるクリニック開設の事前相談を行います。なぜ医療法人ではなく一般社団法人での開設なのかを詳細に記した理由書の提出を求められます。また、図面の確認、非営利性の確認、予算書の確認などがあり、開設許可申請を行っても良いという承諾を得て、申請を行う必要があります。クリニックへの実地検査があり、開設許可が下りたのち、クリニックの開設届を提出します。管轄の厚生局へ保険医療機関指定申請を行い、指定ののちに保険診療をスタートします。

 非営利型一般社団法人の要件

診療所の開設と経営を目的とした非営利型の一般社団法人を設立する際、前述の定款に必ず定めなければならない事項があります。剰余金の分配を行わないこと、解散した時は残余財産を国・地方公共団体など公益的な団体に贈与すること、各理事について理事とその理事の親族等である理事の合計が理事の総数の3分の1以下であること、です。非営利性が徹底された法人の要件には、上記の定款の定めに違反する行為を行うことを決定し、行ったことがないことも含まれます。また、理事会と監事を設置しなければならないとする保健所もあります。

一般社団法人設立によるクリニック開設で 特に押さえておくべきポイント

特に押さえておくべきポイントは、理由書の記載と非営利性における遵守事項についての誓約書です。一般社団法人設立によるクリニック開設の際、保健所に理由書の提出と誓約書の提出を求められることが多いです。なぜ医療法人や個人開設クリニックではなく一般社団法人によるクリニック開設を選択したのかを保健所に説明しなければなりません。その理由が確認できない場合、審査が長引きます。もちろん理由は、営利目的ではない理由でなければなりません。営利を目的として診療所を開設しようとする者に対して、保健所は開設許可を与えないことができるためです(医療法第7条第7項)。書面の提出のみならず、面談が必要な保健所もあります。非営利性における遵守事項は、平成5年に厚労省が出した通知によるものであり、開設時も開設後もその法人が実質的に診療所の開設・運営の責任主体であり、営利を目的としないことを誓約します。

 一般社団法人と医療法人の違い

非営利型の一般社団法人によるクリニック開設と、医療法人によるクリニック開設の違いは、医療法人が都道府県に対して設立認可申請を必要とし、認可後に法務局の登記を行うのに対して、一般社団法人が公証役場での定款の認証と法務局の登記のみの点、医療法人が毎会計年度終了後に事業報告書を都道府県に提出するのに対して、一般社団法人はそのような提出義務がない点、医療法人の役員の変更は都道府県へ役員変更届が必要ですが、一般社団法人はそれが必要ない点、医療法人は分院を開設する際に都道府県の定款変更認可申請が必要なのに対して、一般社団法人は保健所に対して開設許可申請を行う点、が挙げられます。

一般社団法人と一般財団法人の違い

一般社団法人と一般財団法人の違いについて、一番の違いは、法人の運営基盤に関する違いです。法人運営の基盤が共通の目的を持った人である法人は一般社団法人、運営の基盤がお金(財産)であり、目的のために集められた財産を管理し運営する法人は一般財団法人となります。一般財団法人は設立時に最低300万円の拠出が必要ですが、一般社団法人にはその決まりはありません。一般社団法人には社員が必要ですが、一般財団法人は社員ではなく評議員が必要です。

一般社団法人設立によるクリニック開設手続きに関するQ&A

一般社団法人の代表理事は、1人でなければならないかというと、そうではありません。例えば3人の理事がそれぞれ代表理事となることもできます。社員と理事の違いは何かというと、社員は支配権を持ち、社員総会が一般社団法人の最高意思決定機関であるのに対し、理事は業務の執行を行う人たちです。その代表者が代表理事となります。一般社団法人が診療所の開設許可申請を行う際、予算書や事業計画が重要ですがどのように作成すればよいかというと、まずは事業計画を立て、それに合致する予算書を作成します。資金計画に無理がなく、報酬の単価や患者数が過大にならないように留意します。保健所は、医療法人開設の診療所と同様に一般社団法人が開設する診療所にも永続性を求めていますので、長く経営が安定して行える診療所であるかどうかを念頭に置いて考えています。第三者が見て納得感と現実味のある予算書となるようにしましょう。予算明細書(収入、支出の細かな項目を記載します)に根拠となる情報を反映できると良いでしょう。医療法やその他関連法令に違反した場合、どのような処分があるかというと、医師の名義を悪用したり、違法な行為を行う診療所は、開設許可の取消や保険医療機関の指定取消があり得ます。また、医師に対しても医業停止処分や保険医登録の取消、最悪の場合は医師免許取消の処分もあります。医療法人による開設であっても一般社団法人による開設であっても非営利性における遵守事項を守り、患者に対して安全に医療を提供できる体制を整え、永続的な運営を続けられるようにしていきましょう。

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