一般社団法人の理事とは?理事会の役割|代表理事の権利義務や責任、選任・解任、任期、権限、設立について

一般社団法人の理事とは?理事会の役割|代表理事の権利義務や責任、選任・解任、任期、権限、設立について

一般社団法人の理事と理事会は、組織運営にとって不可欠な存在です。
理事は業務を執行する役割を果たします。特に代表理事は、外部との契約や法的手続きで法人の顔として機能します。一方、理事会は理事たちが集まり、重要な意思決定を行う場であり、株式会社の取締役会に相当します。理事の選任や解任、任期の設定は社員総会の普通決議によって行われます。社員総会の普通決議によって選任します。普通決議とは、原則「社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した社員の議決権の過半数の賛成」で行います。

代表理事は理事会がなければ理事の互選か社員総会の決議で、理事会を置いている一般社団法人では、代表理事は理事会の決議によって選定します。

また、理事及び理事会の権利と義務、そして責任の範囲も厳格に定められています。これらのポイントを熟知することは、一般社団法人の代表理事や理事としての職務を効果的かつ効率的に遂行する上で極めて重要です。具体的な規定やガイドラインを理解し適切に適用することが、法人全体の利益を保護し、使命を遂行するために重要と言えます。それでは、順番に一般社団法人の理事と理事会について見ていきましょう。

理事とはなに?

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律では、理事について下記のように定義されています。

第七十六条 理事は、定款に別段の定めがある場合を除き、一般社団法人(理事会設置一般社団法人を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。

※一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)より抜粋

条文の通り理事とは、法人の業務を効執行するという中心的な役割を指します。
この重要なポジションには、法人の方針を定め実行する責任が伴います。理事は意思決定を行うことで法人の運営方針を形成します。

特に代表理事は法人を代表し対外的に法人の意志を表明する重要な任務を持ちます。理事の任期は最長2年であり、社員との兼職も認められています。理事は最低でも1人以上が必要で(非営利徹底型は3人以上)、その選ばれ方や任務の執行には明確な規定が必要です。後程詳しく説明します。

なお理事は社員と兼任することができますが、社員は法人もなれるところ、理事は法人は不可で人しかなることができません。

理事の権限について

一般社団法人における理事の主たる権限は、「業務執行権限」と「代表権限」の二つになります。

具体的には、日常の事業活動において広範な権限を持ち、事業計画の作成や予算の編成・執行、新プロジェクトの立ち上げ、重要な契約の締結などを行います。特に、理事が2名以上の場合、決定は過半数の理事の同意によって行われます。

さらに、理事会の有無によって、理事の業務執行権限の範囲が異なります。理事会非設置型の場合、全理事が業務執行権限を共有しますが、理事会を設置している場合は業務執行権限は代表理事や業務執行理事に限られ、他の理事は理事会での意思決定に参加する重点を置きます。つまり、理事会のメンバーを構成するにとどまり、それぞれが業務執行権限を有さず、当法人業務の意思決定を行うメンバーの一員であるだけになります。これにより、意思決定プロセスが合理化され、効率的な業務運営が可能となります。

ここで業務執行とは、実際に法人の業務を執り行うこと、具体的な事業活動を遂行することをいい、業務執行理事とは、代表理事以外の理事であって、理事会の決議によって業務を執行する理事として選定された者をいいます。

理事の代表権とは?

理事の代表権は、一般社団法人において重要な役割です。理事は法人を外部に対して代表し、法人の意志を表明する権利を持っています。特に、代表理事は法人名義で契約や重要なビジネス決定を行う責任者です。理事会の有無により、代表権の扱いが異なります。

理事会を設置していない場合(理事会非設置型一般社団法人):
理事会非設置型の場合、全理事が代表理事の権限を持ち、法人を外部に対して代表できます。理事が2人以上いる場合は、業務執行権限とは異なり、理事は各自が一般社団法人を代表します。ただし、代表権限を持った理事を1人とすることももちろん可能です。
もし代表理事を2名以上選定する場合には一般社団法人の印鑑届出を各代表理事で行うのかを別途決める必要があります。

理事会を設置している場合(理事会設置型一般社団法人):
理事会設置型の場合は、理事の中から代表理事と選定された者のみが有します。選定されなかった理事は、代表権限を有しません。

代表理事は、組織の適正な運営のため、他の理事や職員と連携しながら活動する必要があります。また、法人の利益を最大化し、法令遵守の責任も担います。理事会の設置がない法人で代表理事を選定しない場合、全理事が重要な役割を共有し、協力して業務を遂行します。理事としての権限と責任を理解し、効果的な運営を行うことが、一般社団法人の成功に不可欠です。

代表理事の選任と解任

代表理事の選任に関する手続きは、一般社団法人が理事会を設置しているか否かによって異なります。

・理事会を設置していない場合(理事会非設置型一般社団法人):
理事会非設置一般社団法人では、通常、各理事が代表理事の役割を果たします。ただし、特定の人物を代表者として定める場合を除きます。

代表理事の選任は、以下の方法によって行われます:
定款において代表理事を指定する。理事の互選や社員総会の決議に基づき、理事の中から代表理事を選出する。

・理事会を設置している場合(理事会設置型一般社団法人):
理事会設置一般社団法人では、理事会が代表理事を選定します。代表理事は、理事の中から選ばれます。
代表理事の選任は、一般社団法人の運営において重要な要素であり、適切な候補者の選出は法人の健全な運営に寄与します。

代表理事の権限と義務

代表理事として担うべき責任は多岐にわたります。一般社団法人は代表理事という機関を通じて契約行為などの対外的な行為を行いますので、代表理事による行為は法人が行った行為とみなされます。

なお、理事長という記載を見かけますが、これは一般社団法人法上の文言ではありませんで、正式には代表理事と言いますし、登記簿謄本には代表理事と記載されます。ただ、体内的に理事長という言葉を使うこと自体は可能です。

代表理事は業務執行権と代表権を持ちますが、業務の執行とは法人の目的に沿った活動推進や、各種契約の締結などの重要な意思決定が含まれます。また、規則の遵守、事業計画の策定、財務報告などの具体的な運営業務も重要な役割です。これらの活動を適切かつ効果的に進めることで、法人の健全な成長と社会における信用を築き上げることが可能です。したがって、代表理事は法人運営の中心として、その権限を活かしつつ義務を果たすことが求められます。なお具体的な権限は下記のとおりです。

  • 事務全般を処理し、法人内部組織の維持管理を行うこと
  • 理事会を招集し、開催すること
  • 社員総会の招集手続きを行うこと
  • 定款、社員名簿、議事録等の必要書類を主たる事務所に備え置くこと
  • 定時社員総会の開催日の2週間前までに、決算関係書類、事業報告書を作成し、主たる事務所に備え置くこと
  • 定時社員総会に決算関係書類を提出すること
  • 定時社員総会で承認を受けた計算書類の貸借対照表を公告すること
  • 定時社員総会終了後、税務申告を行うこと
  • 登記事項に変更が生じたら法務局へ登記申請を行うこと

これらの権限は、一般社団法人の代表理事が法人の運営や法令順守のために行う一連の業務を包括しています。

理事会の設置とそのメリット

一般社団法人において理事会の設置は任意ですが、組織運営を効率的かつ効果的に行うためことができます。社員総会で定めなければならない事項を除き、社員総会を開かなくても物事を決めることができる、という点に、理事会を置くメリットがあります。

一般社団法人の規模が大きくなり社員数が増えた場合、社員全員の出欠を取って話し合って決めるのに手間がかかることもあると思いますが、理事会があれば比較的少数の人数で意思決定できるため、スムーズな運営が期待できます。

理事会は組織の方針決定や戦略的な計画を主導し、法令遵守を含むさまざまな義務の履行を監視します。特に、理事や代表理事として選任されるメンバーは、重要な決定に責任を持ち、組織の透明性や説明責任を高めることができます。また、理事会の存在は外部に対して信頼性を示し、利害関係者との関係構築に寄与します。

理事会はテレビ電話やテレビ会議での開催も認められますが、その際も議事録は作成しなければなりません。

理事会の主な機能と活動

理事会は業務執行機関として社団の運営にあたります。会社で言えば取締役会のような存在といえます。業務執行機関として「業務の意思決定」「理事の職務執行の監督」「代表理事の選定・解任」「社員総会召集の決定」などを行います。理事および理事会と社団法人は委任の関係にあるため、理事は民法で規定される社会通念上の善良な管理者の注意義務を負います。

理事会の決定権限と運営方法

理事会の決議事項は、法律に定められているものと、定款で定められるものとがあります。法律で定められているものについては以下のとおりです。

  • 法人の業務執行の決定
  • 理事の職務の執行の監督
  • 代表理事、業務執行理事の選定・解任
  • 重要な財産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 重要な使用人の選任及び解任
  • 従たる事務所、その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 社員総会の日時、場所、議題・議案の決定
  • 理事の競業、利益相反取引の承認
  • 事業計画書、収支予算書の承認
  • 事業報告、計算書類等の承認

定款に定める決議事項としては下記のとおりです。

  • 役員の損害賠償責任の免除
  • 法人内部の役職(会長、副会長、専務等)の決定
  • 各種規則の制定、改廃
  • 会員の入会審査、承認基本財産の維持、管理及び処分の決定

理事会は定期的に開催され、理事たちの多数決によって行われます。理事会の決議は、原則、議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数で採択されます。決議要件は定款で変更することも可能です。

理事会を設置する社団法人は、その議事録を主事務所に備え置かなければなりません。また、社員は必要があるときはいつでも議事録の閲覧を請求することができます。

理事会の透明性と公平性は、理事会の信頼性を高め、組織の健全な運営を支えるために非常に重要です。理事や代表理事は、これらのプロセスで十分な責任を持ち、適切な判断を下すことが求められます。理事会の効果的な運営方法を理解し、適用することが、組織全体の成功に直結します。

理事の選任と解任

理事の選任と解任は組織運営の中核であり、これらのプロセスは法人の効率的な管理と持続可能な発展を支える基盤といえます。理事は組織の重要な決定に関与し、方針を策定し、業務を執行します。一般社団法人の理事は、社員総会の普通決議によって選任されます。普通決議とは、社員の議決権の過半数を有する社員が出席し、出席した社員の議決権の過半数の賛成で行います。定款に別段の定めがある場合は、この決議方法が適用されません。一方、解任はその理事が組織の目標に貢献が困難になった場合や義務を果たせない重大な事情がある場合に限られます。解任に至るプロセスも、公正で透明性のある方法で行われることが求められます。理事としての任務の重要性と責任を理解し、適切な選任と解任の流れを把握することが組織の成功に繋がる鍵です。

また、理事はいつでも辞任することができますが、その際には辞任届を提出することとなります。一方で任期切れで理事を辞めるのを退任と言います。この場合は再度理事になる場合には理事の重任手続きをすることになります。

理事の選任手続きと要件

理事の選任は、一般社団法人の基盤となる重要なプロセスです。各社団法人の定款に則り、総会での投票を通じて理事が選ばれるのが通例です。この選出では、候補者の年齢、国籍、専門的な経験が重視されます。これらの要件は法人によって異なりますが、どの場合も理事としての責任を果たせるかが考慮されます。また、理事は法人の目的に沿った効果的な意思決定を行う能力が求められるため、関連する知識や経験が必須です。理事会を構成する際には、これらの点を考慮して、適任者を選ぶことが組織の成功につながります。

理事解任の流れと条件

理事は、いつでも社員総会の決議によって、解任することができます。ただし、その解任に正当な理由が無い場合、その解任された理事は解任によって生じた損害の賠償を請求することができます。役員任期の満了前に解任した場合、任期満了までの残存期間分の役員報酬を請求される場合もあります。

理事を解任するプロセスは、その法人の定款に記された手順に厳密に従う必要があります。主な解任理由として義務違反、不正行為、職務怠慢などがあります。

任期と条件に関する規定と手続き

一般社団法人の理事の任期や選任条件は、組織運営において非常に重要です。理事会を構成する際、理事の任期と条件を明確にすることが、組織の透明性と公平性を保つために必要です。理事の選任は、理事会や社員総会などの適切なプロセスを経て行うべきであり、任期の長さや更新プロセス、解任の手続きも事前に定めることが重要です。さらに、理事の義務や権限に関する規定は、運営の効率化やトラブルの防止に役立ちます。これらの規定を理解することで、一般社団法人はより安定した運営が可能です。

理事の任期設定と延長

一般社団法人の理事の任期は法的には最長2年ですが、定款でこの期間を短くすることも可能です。理事が切れても、組織の目標達成に寄与している場合、任期を延長することが考えられます。ただし、任期の延長は理事会や社員総会の承認が必要であり、透明で効果的な評価プロセスが重要です。理事が組織の目標にどのように貢献しているかを定期的に評価し、その結果を基に任期延長の可否を検討するのが望ましいプロセスです。このアプローチにより、合理的で納得感のある運営が実現可能です。

任期終了後の手続き

理事の任期満了後の手続きを正確に行うことは、組織の円滑な運営に不可欠です。任期が終わる理事がいる場合、事前に任期終了の通知を行い、再任、または後任者を選出するのかなどの準備を整えることが必要です。

もし理事を交代する場合には、実務的には引き継ぎ文書の準備にも特に注意を払う必要があります。これには、財務報告や進行中のプロジェクトの詳細など、新たな理事がすぐに業務を引き継げるような情報が含まれるべきです。適切な文書管理を行うことで、新旧理事間のスムーズな移行が保証され、組織の持続的な成功に寄与します。

一般社団法人の理事に関するQ&A

Q.理事の人数について

A. 理事は最低1名必要であり、上限は設けられていません。ただし、理事会を設置する場合、理事は最低3名以上が必要です。理事は一般社団法人の重要事項を決定し、業務執行権を持つ役員です。代表理事を複数名置くことも可能で、法律上は代表理事が正式名称ですが、内部では理事長などの呼称を使用することもできます。

Q.理事の善管注意義務とは何か

A. 理事の善管注意義務とは、民法に規定された理事が法人の財産を管理する際の高い注意義務のことです。たとえば、会計処理の不正が見受けられた場合、理事がそれを監督する義務を怠っていたかが問われます。

Q. 理事の任期について

A. 理事の任期は最長2年で、これを伸ばすことはできませんが、任期満了後に再任は可能です。任期満了後は定時社員総会で再任される必要があり、再任後は法務局に役員変更の登記申請を行います。また、理事は自分の意思でいつでも辞めることができますが、法人に不利な時期に一方的に辞任する場合は、法人が被る損害を賠償する責任があります。

 

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