最近メディアを賑わせているのが現役の力士への暴行に関するニュース。
正直あまりテレビを観たりしない自分でも、至る所でこの件に関する情報を目にしますが、法人設立が専門の行政書士としての視点から気になるニュースがありました。
それは「理事の解任」についてです。
暴行を受けた力士が所属する部屋の親方が、相撲協会から理事(役員)の職を解任される可能性があるというニュースです。
役員を解任するためには?
相撲協会は正式には公益財団法人日本相撲協会と言います。
一般財団法人は300万円以上の出資をし、理事3名以上、評議員3名以上、監事1名以上の7名以上がいれば、公証役場で定款認証し、法務局に設立登記をすれば設立することができます。
一方で相撲協会のような公益財団法人というのは、一般財団法人とは異なり、申請を行い、行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)から公益認定を受ける必要があります。
簡単に言うと公益性、公共性のより高いものと認定された団体ということになります。
財団法人の理事を解任する方法
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律では下記のように定められています。
第百七十六条 理事又は監事が次のいずれかに該当するときは、評議員会の決議によって、その理事又は監事を解任することができる。
一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。
二 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
これは一般財団法人及び公益財団法人に共通します。
さらに、公益財団法人日本相撲協会の定款には下記のようにあります。
(役員及び会計監査人の解任)
第32条 理事又は監事が、次のいずれかに該当するときは、評議員会の決議によって解任することができる。
(1)職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。
(2)心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
つまり、評議員会で決議するだけでは解任することができず、職務上の義務違反や職務を怠ったり、心身の故障があったなどの条件を満たさなければならないわけです。
解任、退任、辞任の違い
そもそも、解任とは本人の同意がなくても辞めさせるということをいいますが、退任や辞任との違いは何でしょうか?
辞任について
辞任は任務や職務を自ら申し出て辞めることをいいます。
退任について
退任は任期満了で退く場合をいいます。
株式会社で取締役を解任する方法
では、株式会社の場合はどうかというと取締役を解任する方法は、会社法に定めがあり、原則として、株主総会の決議をする必要があります(会社法339条1項)。
会社法339条1項 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
つまり、50%を上回る議決権を有する株主が出席し、出席した株主の過半数が、取締役の解任に賛成すれば、取締役は解任されることになります。
したがって、50%を超える会社の株式(議決権)をコントロールできるのであれば、取締役を解任することはできるのであり、その取締役の能力が不足しているとか、職務怠慢があったなどの理由は必要ではありません。
会社法339条2項 解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。
正当な理由とは何か
「正当な理由」ありと判断されやすい場合として下記の事項が挙げられます。
- 心身の故障がある場合
- 法令、定款違反の行為をした場合(例えば、①取締役会の承認なく競業行為を行ったり、会社から借入をした、②横領や背任により会社に損害を与えたような場合)
- 職務遂行能力を著しく欠くなど、職務への著しい不適任がある場合
- 経営判断の失敗
このように、例えばそりがあわないだけであれば正当な理由とならずに解任によって生じた損害、つまり、任期満了までもらえる予定だった役員報酬などを支払わねばならない可能性があります。
まとめ
相撲協会の件に話を戻すと、今回は評議員会で理事の解任を決めるには職務上の義務違反や職務を怠ったといえなければならず、個人的には法律的に今後どのようになっていくのか興味深いところです。
また、解任した際には遅滞なくその旨を登記する必要がありますが、それは退任や辞任の際にも同じです。ただ、それぞれ手続きに必要な書類は異なりますので注意が必要です。
特に、役員の任期切れにかかる手続きは忘れてしまう場合が多く見受けられますが、会社が解散させられてしまう可能性もあります。
特に途中で取締役や理事が追加されたときの任期の管理や、問題役員がいるときの解任や退任などに興味がある方はお気軽に下記のフォームからお問い合わせください。